林原美術館 HAYASHIBARA
MUSEUM OF
ART

コレクション

収蔵品

Collection overview

林原美術館は林原一郎氏が蒐集した絵画や工芸品と、旧岡山藩主池田家の大名調度品から成り立っています。 企画展または特別展において、収蔵品を順次入れ替えて展示しています。

収蔵品件数
刀剣・甲冑・絵画・書跡・能面・能装束・陶磁・金工・漆工品等、約9,000件を所蔵しています。
屏風
らくちゅうらくがいずびょうぶ 洛中洛外図屏風

 江戸時代元和頃の京都市中や郊外を描いた洛中洛外図。右隻には左京から東山にかけ、中央の左に禁裏を描き、左隻には二条城を含む北山から西山までの景観を描き、描かれた人数は3,000人を越え、描写は精緻に富んでいる。右隻の内裏へと続く行列に葵紋をあらわした道中具が認められ、元和6年(1620)の徳川和子(東福門院)の入内行列と考えられている。また寛永元年(1624)10月にほぼ取り壊しの終わった伏見城が描かれていることから、元和年間(1615~23)頃の景観と考えられる。江戸時代初期を代表する洛中洛外図であり、岡山藩主池田家伝来品。

指定
重要文化財
日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
紙本金地著色/6曲1双
法量
各縦158.4 横360.0
きりほうおうずびょうぶ 桐鳳凰図屏風

 満開の桐の巨木を画面の端に配し、その間に雌雄や親子などさまざまな鳳凰を描く。鳳凰は天下が正しく治められる時に現れる伝説上の瑞鳥で、桐の枝に住むと伝えられる。このため、桐と鳳凰の取り合わせは古来より支配者層に大変好まれた意匠である。
 徳川家に伝来した本作には作者を示す落款はない。緑青、群青などの濃密な彩色、金雲や水流などの空間の作り方や画面に占めるモチーフの大きさなどから桃山から江戸初期の狩野派の作と考えられる。このような作風から、桃山時代を代表する絵師の狩野永徳の次男で、江戸時代の狩野派隆盛の礎を築いた狩野孝信(1571~1618)の作とされる。
 明治35年(1902)、当時の所有者であり川崎造船所や神戸新聞社の創業者・川崎正蔵(1837~1912)によって、明治天皇の神戸行幸の行在所に飾られた「名誉の屏風」五双の内の一つである。

指定
重要美術品
作者
伝狩野孝信
日本
制作年/時代
桃山時代~江戸時代
材質/形状
紙本金地著色/8曲1双
法量
各縦167.2 横486.0
こんよばんこくぜんずびょうぶ 坤輿万国全図屏風

 坤輿万国全図とは、1602年にイタリア人宣教師のマテオ・リッチ(1552~1610)が「地球が球体である」という説を元に描いた世界地図である。刊行された中国を中心に描かれ、万里の長城なども描き込まれている。日本列島は本州、四国、九州と特徴を捉えて描かれているが、北海道の位置に北陸道があるなど正確ではない。南極大陸もオーストラリアを含む巨大な大陸(メガラニカ)として描かれている。
 本作品は坤輿万国全図を彩色して屏風に仕立てたもので、岡山藩に仕えた狩野家の奉公書に、絵師の狩野自得が元禄14年(1701)「世界の図御屏風の絵」の制作を命ぜられ、翌年に完成との記述があり、本屏風の可能性が示唆されている。これが本屏風とすれば、二代藩主の池田綱政(1638~1714)が制作させたとも考えられる。岡山藩主池田家伝来品。

指定
岡山県指定重要文化財
作者
狩野自得
日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
紙本著色/6曲1隻
法量
縦164.8 横376.0
ぜんせきへき・こうせきへきずびょうぶ 前赤壁・後赤壁図屏風

 中国の北宋時代に活躍した政治家であり、書家としても詩人でも著名となった蘇東坡(蘇軾)(1037~1101)が長江の赤壁で友人と二度に渡る舟遊びに興じた際の感慨を詠んだ「赤壁賦」を主題とした屏風。右隻には舟から月を愛でている「前赤壁賦」、左隻には河を渡る鶴を眺める「後赤壁賦」の詩趣を忠実に描きつつ、大河・長江の絶景を想像させる構図に仕上げている。
 江戸時代中期に南画の先駆者として著名な尾張名古屋出身の文人である彭城百川(1697~1752)が、延享3年(1746)49歳の時に描いた左右一対の作品である。
 百川の代表作のひとつであり、基準作でもあることが高く評価され、平成28年(2016)に岡山市指定重要文化財に指定された。

指定
岡山市指定重要文化財
作者
彭城百川
日本
制作年/時代
延享3年(1746)江戸時代
材質/形状
紙本墨画/6曲1双
法量
各縦163.5 横367.2
かちょうずびょうぶ 花鳥図屏風

 四曲一双の大画面の中心に桃、柳、芙蓉と太湖石を描き、左右両隻にそれぞれ燕、白鷺、鴛鴦などの群禽と、百合、菊など百花百草を配し、右隻の春と左隻の秋とを対比させている。本作に見られる、画面の構成力と華麗な色彩感覚は見事であり、梅逸の代表作といえる。
 山本梅逸(1783~1856)は、尾張国の絵師・山本蘭亭や張月樵から絵を学び、中国絵画を研究し、円山四条派の影響を受けつつも独自の花鳥画を確立、安政元年(1854)には尾張藩御用絵師に取り立てられ、中京画壇(名古屋)で活躍した絵師の一人である。
 右隻一扇に「辛丑夏四月写梅逸」と款し、「山本亮」、「明卿人」(白文方印)の二印を捺す。辛丑は天保12年(1841)、梅逸58歳の最も気力の充実した時期の作である。

作者
山本梅逸
日本
制作年/時代
天保12年(1841)/江戸時代
材質/形状
紙本著色/4曲1双
法量
各縦171.7 横370.6
たけずびょうぶ 竹図屏風

 雲の部分には金箔を貼り、竹は銀箔と緑青などであらわした屏風。構図において地面をほとんど描かないことで無限の奥行を感じさせ、竹の密集と散在、金箔の雲が竹を前後することで遠近と幻想的な空間が演出してある。さらに竹の緑には濃淡があり、筍から白く老いた竹まで時間軸をも描いて見事である。竹は伸長がはやく、風雪に強く、倒れないというところから「健やかな成長」を意味し、吉祥画の好画題として良く描かれた。
 本作の構図のとり方から元から屏風絵として描かれたものではなく、おそらくは壁貼付となっていたものと考えられる。製作の時期は江戸時代の初めで、雲谷派のしかるべき画人の手になったことが想像される。
 大正7年8月に作成された「諸什器取調帳」(岡山大学附属図書館所蔵池田家文庫)によれば、本屏風は「姫路城ニ在りし屏風」と記されており、このころまで池田家ではそのように伝えられていたことがうかがえる。
 昭和37年10月、昭和天皇、皇后両陛下が第17回国民体育大会へご臨席の為来岡された際の行在所(後楽園延養亭)の調度品に選ばれた。岡山藩主池田家伝来品。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
紙本金地著色/6曲1双
法量
各縦175.7 横555.8
げんじものがたりずびょうぶ 源氏物語図屏風

 右隻、左隻ともに金雲で三段に仕切られており、その合間から覗くように『源氏物語』全五四帖の中から適宣選ばれた場面が描かれている。右隻には「夕顔」、「葵」、「胡蝶」、「若紫」など11場面、左隻には「紅葉賀」、「関屋」、「初音」など11場面が描かれており、各隻には「宗貞」の鼎印が捺されている。
 宗貞の経歴については定かではないが、『古画備考』によれば元和2年(1616)頃、狩野派の画人たち12名の一人として、寄合書・押絵貼形式の「二四孝図屏風」(現存不明)の製作に携わっていたことが知られている。岡山藩主池田家伝来品。

作者
宗貞(狩野派)
日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
紙本金地著色/6曲1双
法量
各縦154.8 横360.0
ひのでさんすいずびょうぶ 日出山水図屏風

 前景に笹を配し、池と数段にわたる丘に槙の疎林が左右両隻に描かれている。金地を背景とした、丹念な描写で描かれた槙樹の配置が画面に変化をつけている。左隻の雲間から浮び出る日輪は銀板を貼付けて表現し、その輝きは、はるか右隻右端の山肌に巻かれた金砂子であらわされている。
 土佐光貞(1738~1806)によって、土佐光茂(生没年不詳)の極めがなされているが、かなり古様を伝える土佐絵とみてよく、近世初期の数少ない遺品として貴重である。

作者
伝土佐光茂
日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
紙本金地著色/6曲1双
法量
各縦154.7 横361.4
ぼたんくじゃくずびょうぶ 牡丹孔雀図屏風

 画面の諸所に襖の引手あとが残り、左右両隻の図様も連続しないことから、本作はさらに大きな障壁画であったものを八曲一双の屏風に仕立て直したと考えられる。華やかな孔雀を墨の濃淡だけで描きあげた筆力は旺盛そのもので、左隻八扇の左隅に「岸雅楽助平駒写」の落款と二印がおされている。
 岸駒(1749~1839、生年は諸説あり)は、江戸時代中期に活躍した絵師で、円山四条派になかで一派を成し、天明5年(1785)に有栖川宮家より雅楽助を称することを許され、以降も同家の庇護のもと御所の障壁画など手掛けた。

作者
岸駒
日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
紙本墨画/8曲1双
法量
各縦162.8 横586.4
はしがっせんずびょうぶ 橋合戦図屏風

 この屏風は、『平家物語』巻第四の「橋合戦」の一場面を描いたもので、後白河法皇の皇子の以仁王を奉じる源頼政軍を右に、これを追う平家軍を左に描き、両軍が京都の宇治橋をはさんで激戦を繰り広げている。狭い橋桁の上で奮戦する源氏に味方をした三井寺の法師・浄妙明秀の後から、「悪しう候(ごめんなさい)」と兜に手をかけ飛び越えていく一来法師の有名な助太刀場面を描いたものである。
 平安時代末、源平動乱の時代を栄枯盛衰で物語った『平家物語』には数多くの名場面があり、それぞれ屏風、絵巻、扇面絵だけでなく調度品や刀装具などへも描かれ、人気を博し、後世に大きな影響を与えた。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
紙本金地著色/6曲1隻
法量
縦137.0 横358.2