林原美術館 HAYASHIBARA
MUSEUM OF
ART

コレクション

収蔵品

Collection overview

林原美術館は林原一郎氏が蒐集した絵画や工芸品と、旧岡山藩主池田家の大名調度品から成り立っています。 企画展または特別展において、収蔵品を順次入れ替えて展示しています。

収蔵品件数
刀剣・甲冑・絵画・書跡・能面・能装束・陶磁・金工・漆工品等、約9,000件を所蔵しています。
能装束
のうしょうぞく あしすいきんもんぬいはく 能装束 芦水禽文縫箔

 全体に雪の降り積んだ芦を、背縫いを中心に左右へ力強く伸びるようにあらわし、その間に遊ぶ水禽を配している。芦や鳥は刺繡によるが、わたし繡いと呼ばれる当代特有の、ふくよかに糸が浮き旺盛な感じを与える施工である。またその色彩処理にも特色があり一般的な桃山時代の色感と異なるが、鳥の表現など楽しい。平糸を中心とする点や金糸繡詰めに替わって金摺箔を併用するなど、明繡をよく日本的に消化している点に注目される。また銀箔も多用されているが、それは芦の間に透ける水面の効果と考えられよう。形態には近世初頭小袖の特色が見られる。類品中屈指の一領である。

指定
重要文化財
日本
制作年/時代
桃山時代
材質/形状
絹・金箔・銀箔
法量
丈142.0 裄60.6
のうしょうぞく こうはくしめきりきくきりもんだんかわりからおり 能装束 紅白締切菊桐文段替唐織

 当代唐織遺品中、白眉の一領である。経を締め切って段替りとし、左右の意匠を異にして片身替りとする。一段は菊枝と桐紋を繡取りに浮かしてあらわし、他は格子段とする。格子部分にも地揚げで柳と桐紋を浮き出させるなど手がこんでいる。
 菊桐文様は菊二枝と桐紋二つが一単位となり、その繰り返しで文様を構成していることがうかがわれる。絵緯の色彩の変化で複雑な面白さを見せることに成功しているが、桃山時代の染織の重要な特色の一つである全体に紅色のあふれるような魅力をしめしている。また白色の扱いの巧みである。
 ゆったりと大きな印象が、見る者をも豊かな気分にするが、袖と身頃、襟、衽、前身など、それぞれの絵羽文様がよく整い、繊細な配慮のあることも見落としてはならない。

指定
重要文化財
日本
制作年/時代
桃山時代
材質/形状
法量
丈140.0 裄59.5
べにじきくえだきりきっこうもんからおりこそで 紅地菊枝桐亀甲文唐織小袖

 この一領は能装束ではなく、池田輝政夫人の絲子の小袖として、帯一筋とともに伝えられた。典型的な近世初期の唐織で、地文様はなく菊枝に花菱亀甲、桐紋散しの意匠。現在では袖幅は広げられて、別裂を足して刺繡で同文様を補っている。おそらく一般的な小袖が能装束として用いられた時に足されたものであろう。またこの時期の能装束には、高貴の人々の料が「小袖脱ぎ」などとして与えられたものが数多くふくまれているとの考えを、実際にうかがわせる資料でもある。
 池田光政の言行録として寛政年間に編纂された『有斐録』によれば、本作は「御腰巻」として使用されていたとの記述があり、桃山時代の着用方法が明らかな武家夫人の装束として貴重である。

指定
重要文化財
日本
材質/形状
法量
丈144.0 裄71.5
のうしょうぞく だんにあきのむしかごもんからおり 能装束 段に秋野虫籠文唐織

 経糸を締切りに染め分けてきわめて魅力的な段替りを構成し、各段にあまりこだわらずに全体の文様をあらわす。あたかも地文様風に秋の野の萩と女郎花を織り詰め、虫籠を一つあるいは二つを重ねて交互に配している。籠には藤花の花房がかぶさるように垂下しているが、これは本来、装飾の結び房で、このように便化、意匠化されたものである。乱れ伏す秋草と虫籠のとり合わせは常識的ではあるが、華やかな色彩の特色によって心ひかれる一領となっている。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
法量
丈146.4 裄71.0
のうしょうぞく あじろになでしこもんぬいいりすりはく 能装束 網代に撫子文縫入り摺箔

 摺箔は表着の下に着付けとして用いられる。本作は数多い池田家伝来の能装束中でも、屈指の一領。撫子という伝統的な主題によりつつ、全く意表をつく構成をしめす。銀箔によって網代を摺り詰め、数本の撫子を縞とし、綾杉形を三段にとる刺繡であらわされた撫子は楽しい気分にあふれた色彩の新鮮な扱いには魅了されよう。それは池田家に伝来する一群の装束のほぼいずれにも共通する感覚である。またこのように刺繡文様を比較的重く採用した摺箔を、数多く見ることができるのも同家伝来装束の特色の一つである。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
絹・銀箔
法量
丈148.4 裄68.5
のうしょうぞく いなたばになるこもんぬいはく 能装束 稲束に鳴子文縫箔

 縫箔には珍しい色目と文様である。宝相華様の小花を縦に繋いだ特色のある生地の緞子は中国からの舶載。文様は稲束と鳴子を組み合わせたもので、着用を考慮して袖と背そして裾の部分が中心となる。さらに着用時にはほとんど見えることのない腰の部分にも三束を重ねて、この大きな構図を完成する。ここにも単に機能をのみ重視しない日本独特の美意識を見ることができる。稲束は平糸を用いた刺繡で、繡技は通例ながら萌葱地に生きる配色には注目される。鳴子は木目を金で摺り、特有の平滑な輝きを見せ刺繡と質感の差が効果的。「小鍛冶」の前ジテ(稲荷明神)に着用されたものか。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
絹・金箔
法量
丈147.0 裄70.0
のうしょうぞく だんかわりしまとともえもんあついた 能装束 段替り縞と巴文厚板

 能装束は伝統尊重を特色とするが、一方、時代を越えて現代の我々にきわめて新鮮な感動を与える場合がある。この一領はまさにその例といえよう。本作は武将や鬼神などの男性の役を演じす際の着付けとして用いられる厚板。巴文という古代中国以来の伝統的な意匠を用いるがむしろそれは曲線の面白さをあらわす手段であり、太い縞の部分の直線と対照させて全く視覚的な、いわば現代の造形に通じる特色をこの装束に見ることができる。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
法量
丈137.0 裄68.0
のうしょうぞく せいがいはおいまつもんきんらんあわせかりぎぬ 能装束 青海波老松文金襴袷狩衣

 白地に金箔糸を織り入れた金襴の狩衣。きわめて高雅な輝きにみちて着装の役がしのばれる。その文様もまた色彩にふさわしく、青海波に老松で吉祥の気分があふれて品格高い。青海波は中国の水波の表現をもとに完成したものと考えられるが、日本の近世意匠にあっては、春のおだやかに遠ざかる海面に、豊かな泰平のよろこびをこめて青海波があらわされる。洲浜や陸地を一切しめさずに松樹を配していても違和感はなく、ただ明るくめでたい。「本邸袷狩衣参号」とあり、明治から大正時代にかけて、東京の大崎本邸で管理されていたことがわかる。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
法量
丈152.0 裄103.5
のうしょうぞく やなぎじゅもんちょうけん 能装束 柳樹文長絹

 全体に桐唐草を織りあらわした紋紗地に初春の芽吹きの季節の柳を、金箔糸の刺繡であらわしたもの。長絹は金糸を中心とした織文様が通例であるが、時にはこのような刺繡もあって、織にはない自由な表現が見られる。この柳樹は洗練された形象が見どころで、どの一枝をはずしても全体の均衡がくずれるであろう。地の萠葱はまた柳葉の色を想起させ、文様と色彩が調和した点でも注目される。うすものの美しさをこの細い枝がいっそうきわだてている。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
法量
丈105.0 裄103.0
のうしょうぞく ずいうんにきくもんきんらんあわせはっぴ 能装束 瑞雲に菊文金襴袷法被

 特色のある地色に金糸が豪奢に映える。文様もまた特色があり、いわゆる霊芝雲から菊花の二枝がのぞくという組み合わせで、長方形にまとめた単位文様による。左右、上下に打ち返して構成するが、全体の配置は不均衡で、こうした金襴意匠は少し珍しい。「本邸法被六号」とあり、明治から大正時代にかけて、東京の大崎本邸で管理されていたことがわかる。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
法量
丈103.0 裄102.8
きょうげんしょうぞく うめにみすかいふもんすおう 狂言装束 梅に御簾海賦文素襖

 狂言の装束は能装束が織物を中心とするのとは異なり、主として染による。またその素材も多くは麻が用いられる。庶民的で活動的な芸態にこれらの特色はふさわしい。これはほとんど関連のない文様を集めながら、配置の妙を感じさせる構成の意匠で、背には円と方形、左袖には海波と松、汐桶、右袖には御簾に梅が枝を配す。特に梅が枝の伸びやかで、はげしい直線の扱いが見事で、受けるように配された御簾の曲線との対照が見どころである。
 文様をすべて一旦白揚げとし、さらに墨描や彩色を加えている。簡潔でありながら豊かな効果をしめす表現である。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
法量
丈81.5 裄101.5