林原美術館 HAYASHIBARA
MUSEUM OF
ART

コレクション

収蔵品

Collection overview

林原美術館は林原一郎氏が蒐集した絵画や工芸品と、旧岡山藩主池田家の大名調度品から成り立っています。 企画展または特別展において、収蔵品を順次入れ替えて展示しています。

収蔵品件数
刀剣・甲冑・絵画・書跡・能面・能装束・陶磁・金工・漆工品等、約9,000件を所蔵しています。
漆工品
あやすぎじししぼたんまきえこんれいちょうど かおいけ・さいしきがい 綾杉地獅子牡丹蒔絵婚礼調度 貝桶・彩色貝

 総体を稲妻形の綾杉地とし、唐獅子と牡丹の文様を高蒔絵であらわした貝桶。この獅子と牡丹の組み合わせは能の演目にある「石橋」からきており、国宝「初音の調度」(徳川美術館所蔵)を手掛けた幕府御用蒔絵師の幸阿弥長重により制作された。貝桶は二対あり、付属する彩色貝の総数は721枚を数える。
 本調度は実質的な初代岡山藩主の池田光政(1609~1682)の次女で、慶安2年(1649)に公家の一条家に嫁した輝姫の婚礼調度である。一般的に婚礼調度には生家の家紋を入れるが、輝姫は3代将軍徳川家光の養女として一条家に嫁いだため、本調度には生家である池田家の家紋「輪蝶紋」ではなく、徳川の「三つ葉葵」の家紋が入れられている。この貝桶・彩色貝のほか、厨子棚や香道具など19点が当館に伝わっている。

指定
重要文化財
作者
阿弥長重
日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
木・漆
法量
貝桶  最大径39.3 総高49.0
彩色貝 縦7.4 横9.4
たけびしあおいもんまきえこんれいちょうど ずしだなかざり 竹菱葵紋蒔絵婚礼調度 厨子棚飾

 総体を金と銀の詰梨子地とし、竹を格子状に配し、その上に金と青金の平蒔絵で竹の葉を散らす。厨子棚は、観音開きの厨子を二箇所に設けた三段の棚である。天板には徳川家の家紋である「三つ葉葵」が七つ配され、中段と下段にある観音開きの扉裏面には、それぞれ恵比寿と大黒、唐獅子と狛犬が描かれている。
 近年の調査によれば、本調度は文化11(1814)年に10代仙台藩主伊達斉宗に嫁した鍇姫の婚礼調度とされるが、同意匠の婚礼調度が東京国立博物館に所蔵されており、そちらは11代将軍の徳川家斉に嫁した紀州徳川家の豊姫(鍇姫の姉)のものと伝えられている。そのため、これらの婚礼調度は姉妹のためにお揃いの意匠で整えられたもので、それぞれが嫁ぎ先へ携えていったとも考えられている。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
木・漆
法量
幅102.0 奥行40.3 高75.7
さくらばしまきえりょうしばこ 桜橋蒔絵料紙箱

 長方形をした面取りの印籠蓋造りで、銀の置口を廻らす。総体を詰梨子地とし、蓋表から側面にかけて流水、橋、桜、岩、蓋裏には桧垣、菊、流水、身の内面には土坡に枝菊があらわされている。流水に架かる橋と、満開の桜を描いた蓋表と、槍垣、菊、流水を描いた蓋裏、見込みの土坡に配された枝菊の意匠が見事に調和し、梨子地の穏やかな色彩が料紙箱に深い趣を演出している。料紙箱と対となる硯箱の箱書には「幸阿弥長重造」との銘がある。

作者
幸阿弥長重
日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
木・漆
法量
縦41.7 横34.1 高14.7
つきなみちどりまきえりょうしばこ 月浪千鳥蒔絵料紙箱

 長方形をした面取りの合口造りで、銀の置口を廻らす。総体を黒蠟色地とし、蓋表の上部に金と銀の平蒔絵と切金で雲層をあらわし、そこから斜下に飛翔する千鳥を高蒔絵であらわす。右側には岩に逆巻く波涛を、左側には金と銀の高蒔絵、平蒔絵、銀梨子地で暈かした満月があらわされている。四辺の唐戸面には雷文を描いており、四つ角には菊丸紋がそれぞれに配されている。
 春慶塗の外箱には「時代黒地金高蒔絵波二千鳥硯箱」と墨書された貼紙があり、岡山出身の塩業家で貴族院議員の野﨑武吉郎 氏(1848~1925)の旧蔵と伝えられている。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
木・漆
法量
縦39.7 横31.4 高14.1
いとざくらじゅたいちょうずまきえちょうど じゅうばこ 糸桜綬帯鳥図蒔絵調度 重箱

 総体を梨子地とし、岩場を流れる川に咲き誇る糸桜(枝垂桜)と尾の長い鳥が舞い踊る様子を蒔絵であらわした重手箱。金の薄片を桜花の形に切り、貼りつけた金貝や、金で高蒔絵や線描することで、輝きに変化をもたせ、文様の遠近及び立体感を表現している。
 桜は神の座す場所であり、結界や魔除けの意を持ち、尾の長い綬帯鳥は、「綬」と「寿」、「帯」と「代」、「綬帯」と「受帯」の音通から、代々官位に就くことを寿ぐ意味がある。「絶えることない」水流など本作の意匠は所蔵者の繁栄を願った吉祥図尽くしである。当館には同意匠、同技法で整えられた調度品が5点あることから、婚礼調度の一部であったものと考えられる。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
木・漆
法量
縦20.9 横26.4 高11.5
しままきえらでんじゅうばこ 縞蒔絵螺鈿重箱

 総体は黒漆塗りとし、縁は金沃懸地とした四段重ねの重箱。主題となる縞は広狭様々で、線の内には縄目、南蛮唐草、蛇行文、檜垣文、木目、波文、連珠、山形、葉形繋ぎ、草文、輪繋ぎ、麻葉繋ぎ、その他の幾何学文が配されている。
 用いられている個々の文様は和様のものが多いが、余白なく全体を埋め尽くす蒔絵と螺鈿で構成される縞文様が南蛮好みの趣を示し、大変魅力的な重箱である。

日本
制作年/時代
桃山時代~江戸時代
材質/形状
木・漆
法量
縦18.0 横19.8 高21.4
りゅうすいみずくさまきえさげじゅう 流水水草蒔絵提重

 基台の総体を梨子地とし、天板に提金具をつけ、中に重箱、徳利、盃、盆などを納めた提重。四段の重箱は黒漆塗りで、蓋の表は枝垂桜とし、上段から藤棚、市松文、蜀江文、雷文の文様を蒔絵であらわしている。徳利は梨子地で、この徳利を収める小箱には沢潟、葵などの水辺の草を描く。盃は朱漆塗、盆には黒漆に金銀の平蒔絵で扇一本を配すなど種々の意匠を組み合わせた華やかな一具である。

日本
制作年/時代
桃山時代~江戸時代
材質/形状
木・漆
法量
縦18.0 横19.8 高21.4
めわかまつまきえひなどうぐ ごばん・しょうぎ・すごろく 梅若松蒔絵雛道具 碁盤・将棋・双六

 雛道具は、将軍家・大名・公家間の婚礼において、姫君が嫁ぎ先に持参する婚礼調度と同じデザインで制作されるミニチュアの調度品である。女子が生まれて初めての節句を祝うための贈り物でもあり、棚や収納箱、化粧道具や楽器、遊戯具など約百以上もの揃えで制作される。
 本作は総体を濃梨子地とし、道具類には梅と若松の折枝をあしらった意匠で、楽器類のみ梅花を散らす。主として揃えの調度には女性側の家紋が入れられるが、本作は池田家の家紋「輪蝶紋」を入れた道具が数点付属するのみで、共通の意匠としては見られない。比較的大きい雛道具であるため、江戸時代前期頃の作と思われる。種類としては、厨子棚、黒棚、書棚、貝桶(一対)や人形など84点からなっており、一つ一つが大ぶりであることも特徴である。

日本
制作年/時代
江戸時代
材質/形状
木・漆
法量
碁盤 縦19.9 横18.0 高9.4
将棋 縦16.7 横14.7 高7.3
双六 縦16.8 横10.3 高8.0
ふうじんらいじんずついしゅぼん 風神雷神図堆朱盆

 中央部に大きな風袋を持った風神と、雷太鼓を背に稲妻を発する雷神を激しく渦巻く雲とともにあらわした菱形の堆朱盆。四方には鳳凰・亀・龍・麒麟が配され、細密な青海波文を地文様として隙間なく埋めている。堆朱とされるが、朱一色ではなく、黄と朱を交互に重ねることにより微妙な色合いを表現している。東洋の堆朱の盆としては大きな作品で、明治43年(1910)の作とされ、完成まで実に6年の歳月を費やしたといわれている。
 岡山で生まれ、刀工として作刀していた逸見東洋(1846~1920)は、正阿弥勝義同様に、廃刀令を期に木彫・漆工家に転身した。特に彫漆作品は、東洋が独自に工夫して得た漆の知識と彫刻技術の粋があらわされており、本作は東洋の堆朱作品の中でもあらゆる面において最高傑作といえる。

作者
逸見東洋
日本
制作年/時代
明治43年(1910)
材質/形状
木・漆
法量
縦24.6 横31.3 高2.7
かちょうしゃじまきえらでんたんす 花鳥社寺蒔絵螺鈿箪笥

 内部に二段の引き出しを備えた倹飩蓋造りの大振りの箪笥。器面全体に社寺、花鳥などの文様が、蒔絵と螺鈿技法の併用であらわされている。これはいわゆる南蛮漆芸といわれている輸出用の漆器で、この箪笥はその典型的な作風を示したものである。16世紀の作で、この種の箪笥のなかでも比較的珍しい構造を見せた、あまり類例をみない稀少価値のある逸品である。

作者
逸見東洋
日本
制作年/時代
桃山時代
材質/形状
木・漆
法量
縦42.8 横64.5 奥行36.0